今年読んだ本の中で、間違いなく上位に入る面白い本を読みました!
是非読んでいただきたいので、紹介します。
「脳が壊れた」(鈴木 大介)
この本のタイトル、ちょっと怖いですよね。
しかし、複数の読んだ方からおすすめいただいたので、よし、読んでみよっ!と手に取ってみました。
すると、感動あり、笑いあり、役立つこと満載でした!
著者の鈴木大介さんは、41歳で脳梗塞になってしまいました。
この本は、発病からリハビリをして日常生活が送れるようになるまでのお話が書かれています。
感動したのは、その表現力!発病してから様々な障害が発生し、日常生活が送れるようになったものの残ってしまった障害もあります。
どれも他者に説明しにくいものばかりでした。
それを、うまく言語化し、さらに笑いにつなげちゃったりしているのです。
例えば、指のリハビリ。
脳梗塞の後遺症から、指を自由に動かせなくなり、リハビリが始まりました。
著者は、自分の手指に名前をつけます。
手を握る神経を「織田信長」、開く神経を魔刀「へし切長谷部」(信長の愛刀)、親指はなぜか「田中角栄」、人差し指は「マリー・アントワネット」・・・というように。
そして、なんとかピースの完成。「世界に平和を。」(←笑!)
また、著者は高次脳機能障害者となってしまい、「半空間無視」といった自分の左側の世界を「見えてみても無視」してしまったり、「感情失禁」といってうまく感情をコントロールできない脳になってしまいました。
そういう脳になったことで、どんな問題が発生するのか、わかりやすく、面白く表現しています。
例えば、病院の敷地内を徘徊(ウォーキング)していると、今までは気にとめなかったものが目に入ってきました。
工事の人がつけた赤い矢印マークはもれなく追いかけたくなったり、分厚いガラスの破片(たぶん自動車の割れたフロントガラス)などを集めてポケットに入れたりしてしまう。
そう、まるで小学生のような脳になってしまったのです。
「ふふふ、「大人め」、この楽しさ、通常の脳みそではわかるまいよ。ビバ、選ばれし小学性脳!楽しい、けど・・・けどね。これじゃとても日常生活が送れないよ!」(←確かに!)
なぜ、こんなに表現力が豊かなのか。
理由は、著者は、発達障害を抱えるが故に社会や集団から離脱・排斥された人々や、精神障害と貧困のただなかに立ちすくみ混乱する人々を取材してきた記者だからです。
彼らの代弁者になるべく、取材をし、記事を書き続けていた著者が、まさに彼らと同じ感覚をもつようになってしまいました。
「ならば、書くのが僕の責任だ。彼らに代わってその不自由感や苦しみを言語化するのが僕の使命だ!」ということで、著者は丁寧に自分のことを描写してらっしゃいます。
著者は、自分に起きている障害は、今まで取材してきた人たちの行動と似ているといいます。
今まで彼らの気持ちをわかったつもりでいたけれど、わかっていなかった。
こんなにつらいものとは、といいます。
リハビリによって、完全とはいかないまでもよくなってきた部分があるので、貧困や虐待による発達障害で困っている子供たちにも、このようなリハビリを受けさせるべきではと考えています。
私はこの本を読んで、静かにすべきところで、わーわー、ぎゃーぎゃー叫んでしまう子ども、やってはいけないと注意したのにやってしまう子どもの心理が理解できたように思います。
もう、どうしようもないのだなと(苦笑)。
つまり、その人自身に原因があるのではなく、脳に原因があるのかもしれない。
脳の発達によってそうした行動は解消していくけれども、うまく発達ができない場合は、その症状が残り続けてしまうことがあるのだ。
そんな発見がありました。
この本で忘れてはならないのが、妻の存在です。
この方もまたかなり破天荒な人生があるのですが、著者が自分の命を絶った方がましだと思いながらも、リハビリを続けていけたのは、この妻のおかげだと思います。
そして、最後に人の縁が大切と著者は言います。
もし困っている人がいたら、声をかけて欲しいと。
「大丈夫?」と聞かれたら「大丈夫」と答えてしまうので、何も聞かずにやって欲しいとのことでした。
心がけていきたいと思いました。
おすすめの1冊です。是非手に取ってみてくださいね!